NFLディビジョナル・プレーオフ、パッカーズ対シーホークス戦。
舞台は、雪のランボーフィールド。選手たちの吐く息が白い。僕は、パッカーズの大ベテランQB、ブレット・ファーブを応援しようとテレビの前に座った。
試合開始直後のキックオフで、パッカーズのリターナーがボールをお手玉。パッカーズは、ロースターの約半数がルーキー、もしくはNFL2年目という、若手中心の構成だ。初めての大舞台に硬くなっているのか……と思う間もなく、次プレイで、右フラットへのショートパスをRBグラントがファンブル。エンドゾーン近くでリカバーしたシーホークスは、ショーン・アレクサンダーのランで、あっさり先制のタッチダウンを奪った。
パッカーズには、プレイオフを経験している選手が少ない。寒さではなく、緊張で萎縮している表情が目立った。これは、早いタイミングでリズムをつかまないと、ズルズルいく可能性もある……。しかし、僕のそんな危惧とは裏腹に、次シリーズの2プレイ目でグラントが再びファンブル。シーホークスは、これもあっさりタッチダウンに結びつけてしまった。0-14。
ゲーム開始から5分も経たずに、2タッチダウン差。正直、僕は頭を抱えた。ファーブがプレイオフに出てくるのは、もしかするとこれが最後になる可能性もある。それがこんな調子で終わったら、悔やみきれない。
降雪は激しさを増している。シーホークスのホルムグレンHCがかぶっているベースボールキャップには、早くもうっすらと雪が積もっている。視界は悪くなる一方。パスプレイにも相当な影響がありそうだ。また、わずか数プレイで2回もファンブルしたグラントのランプレイは使いづらい。これは、かなりのハンディキャップのはず、だった。
ところがファーブは、力強くこのピンチを脱出した。パスをつなぎ、最後はWRジェニングスへのタッチダウンパスを決めて、7-14。続くシーホークスの攻撃を3&outに抑えた後のシリーズでは、60ヤード以上をきっちりドライブし、グラントのタッチダウンランに結びつけた。これで同点。さらに、前半のうちに2本のタッチダウンを追加し、28-17でハーフタイムに入った。
中でも凄かったのは、第2Q終盤、TEリーへのパス。強いプレッシャーを受け、半ばサックされかけたファーブは、間一髪でポケットから脱出。よろめき、つんのめりそうになりながら、地上すれすれのアンダーハンドでパスを投じてファーストダウンを取った。
執念、ひらめき、遊び心……。ファーブの素晴らしさが、結晶となったワンプレイ。本当に心に染みた……。デザインされたプレイではなく、こういう崩れたプレイでの機転が、ファーブの真骨頂。しばらく、このプレイは忘れられそうにないな。
もう一つ忘れられないのが、ゲーム後半、パッカーズがタッチダウンを取った直後のシーン。ファーブが、やはりベテランのWRドライバーに、笑いながら雪球を放り投げていた。40歳近い大男が、ガキのような笑顔でチームメイトに雪合戦を仕掛けている。
映画「リプレイスメント」のヒロインは、クォーターバックを「the biggest baby」と呼んでいた。そうだな、ブレット・ファーブは「biggest baby」かも知れない。愛すべき、そして偉大な赤ん坊だ。
今日の試合で、ファーブがさらに好きになった。クールなジョー・モンタナは僕にとって永遠のヒーローだが、ファーブも素晴らしい。クォーターバックのなかのクォーターバック、男の中の男だ。