夕食時。テレビの電源を入れてみると、テレビ朝日で「ミュージックステーション」が放送されていた。このところ、ニュース・スポーツ系以外のテレビ番組をリアルタイムで見ることは、ほとんどなくなっている。しかし、折しもヴォーカル音源合成ソフト「GACKPOID」が紹介されていたため、チャンネルをそのままにしてながめていた。
僕は、「初音ミク」についてはざっくりとしたところしか知らない。メロディと歌詞を入力することで、コンピュータに「歌を歌わせる」ことができるソフトであること。ニコニコ動画などに、既存曲のカヴァーやオリジナル曲が多数投稿されていること。理解としては、そんなところだ。このソフトで作られた楽曲も、そんなに数多く聞いているわけではない。
でも、このソフトが大きな可能性を秘めていることくらいは分かる。何しろ、デスクトップで「歌声」を生み出すことができるのだ。人類史上、一貫してダントツの人気を誇っている楽器は、間違いなく人の声。それを、自由に、手軽に扱える。さらに、生み出したデジタルデータを公の場にアップするのもたやすい。
つまり、才能さえ十分にあれば、中田ヤスタカがPerfumeによって実現していることを、中高生だってかなえられるというわけだ.
「GACKPOID」は、初音ミクシリーズのエンジンを流用し、Gacktの声を利用できるようにしたソフト。大物ヴォーカリストを自由に歌わせられるソフトの登場は、音楽関係者にとってもかなりのインパクトがあるはずだと思った。でも、ソフトの紹介VTRが終わった後、スタジオの出演者のほとんどは、「ネタ」扱いをして笑っていた。凄く不思議な気がしたな。
タモリがネタ扱いするのは分かる。彼にとって、音楽業界はあくまで「人ごと」だから。でも、でも、音楽のプロフェッショナルにとっては、そんな状況ではないだろう。新しい才能が市場に参入する際の垣根が低くなるということは、プロミュージシャンにとっては競争相手の増加を意味する。一方、自らの音楽をできるだけコントロールしたいと思う職人タイプのミュージシャンにとっては、こうしたツールの充実は、理想の音楽の実現可能性を高めることにつながるはず。大瀧詠一なんて、喜んでいじり倒しそうだもんな。ま、いじり倒した挙げ句、「こんなもの屁の役にも立たん」と放り出す可能性も高そうだけど。
いずれにせよ、ミュージシャン連中のほとんどが危機感のない顔をしていたのは、ちょっと驚いた。音楽業界でも、技術の進化が制作環境を大きく変えている最中だろうになあ。