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失点の44.4%は最後の15分に集中~ガス欠防止が日本代表の鍵握る

インサイド:「日本らしさ」は今 4度目のW杯の戦い方/2
道半ば「90分の持久力」

 試合開始とともに短距離走者のように飛び出し、ボールを持った相手を執拗(しつよう)に追い回す。奪ったら細かくパスをつないで攻め立てる--。
 09年9月5日の親善試合オランダ戦。終盤に連続失点して結果は0-3に終わったものの、日本人の持久力と俊敏性という特長を前面に押し出した戦いで試合途中まで強豪を苦しめた。「あれを90分やり通す。それ以外に目標に達する道はない」。岡田武史監督が、進むべき道を再確認した試合だった。

(2010年5月13日 毎日新聞)

 サッカー日本代表・岡田武史監督の「コンセプト」の1つは、運動量だ。相手より多く走ることで、こちらはフリーになり、相手はフリーにさせない。そうすることで、日本人にとって最大の弱点である「対人スキルの低さ」を補おうと考えているようだ。
 前代表監督のイビチャ・オシム氏も、選手に走ることを求めていた。しかし、当時と今の日本サッカーはまるで違うと、僕は思っている。あの頃には築かれていた信頼の絆が、今のチームにはない。
 オシム氏が率いていた頃のジェフは、選手が後ろから次々とわき出してくるような攻撃を展開していた。サイドからクロスを入れたとき、ペナルティエリア内に味方が5~6人いるようなことも珍しくなかった。それは一種、上杉謙信得意の「車懸かりの陣」を彷彿させたな。オシム監督時代の日本代表も、徐々にではあるが、そこに近づいていたと思う。
 なぜそんなことができたのか? それは、当時のジェフの選手が、互いに信頼し合えていたからだ。ボランチが相手のマークを捨てて前戦に上がれば、サイドバックやセンターバックが必ずそのスペースを埋める。その安心感が、選手達のためらいを取り除き、ゴール前に殺到させた。その信頼関係を結ばせたのは、オシム氏だった。彼は選手に走れと指導するだけでなく、彼らが全力で走るための環境をきちんと整えていたのだ。
 ところが、今の日本代表はどうか。
 例えば、相手のディフェンダーがボールを持つと、フォワードは猛烈な勢いで追いかけ始める。「前からのプレス」が、このチームの基本だからだ。フォワードは全力で追いかけ、相手ディフェンダーを横パスに追い込む。ところが、だ。横パスを受けた相手選手には、味方は誰も詰めていない。パスが出た後、別の味方選手は押っ取り刀でプレスの動作を始める。そして、最初にプレスをしていたフォワードは、味方が全力で追いかけている様子をむなしい視線で見送る……。そうしたシーンを、この1~2年で何度も見せられた。こんなサッカーをしていたら、肉体的にも精神的にも疲弊するに決まっている。

 上の記事では、日本代表が後半に失点する傾向があることを伝えている。例に引かれているオランダ戦では、69分、73分、87分と立て続けに得点を許し、0-3で敗れた。原因は明らかに「ガス欠」だ。信頼関係がないなか、本当の意味で「ムダ走り」をさせられ、選手達は疲労困憊している。だから、大事な時間帯で踏ん張れないのだ。同じ事は、2006年のワールドカップでも起こった。言わずと知れたオーストラリア戦。1-0でリードしていた日本は終盤になって足が止まり、84分、89分、92分にゴールを決められどん底に突き落とされた。
 岡田氏の「コンセプト」がどんなものか、僕には正確にはわからない。ただ言えるのは1つ。ピッチ上で展開されているサッカーは、「コンセプトは選手任せ」だったジーコ監督時代と大差ないということだ。いや、選手のスケール感が小さくなった分、縮小再生産と言えるか。でも、この種の後ろ向きな愚痴は、もう言うまい。

—-

 日本は後半に弱い。そのことは、南アW杯のグループリーグで日本と同組に入った各国と比較しても分かる。下記は、各国が戦ったW杯予選リーグの得点・失点を、時間帯別にまとめたもの。FIFAのワールドカップ公式サイトにある「Preliminaries」ページを参照して集計した。なお、国名の後ろの数字は、2010年4月28日時点でのFIFAランク

○オランダ(4)/欧州予選成績……8勝0分0敗

※対戦相手/ノルウェー(22)、スコットランド(44)、マケドニア(60)、アイスランド(91)

  得点 失点
1分~15分 2
16分~30分 4
31分~前半終了 3
46分~60分 3
61分~75分 2
76分~試合終了 3 2
合計 17 2
1試合あたり 2.13 0.25

 

○カメルーン(19)/アフリカ予選成績……9勝2分1敗

※対戦相手/ガボン(41)、モロッコ(70)、トーゴ(73)、カポベルデ諸島(-)、タンザニア(-)、モーリシャス(-)

  得点 失点
1分~15分 2 1
16分~30分 5
31分~前半終了 1
46分~60分 7
61分~75分 7 1
76分~試合終了 2 1
合計 23 4
1試合あたり 1.92 0.33

 

○デンマーク(35)/欧州予選成績……6勝3分1敗

 対戦相手/ポルトガル(3)、スウェーデン(37)、ハンガリー(56)、アルバニア(80)、マルタ(-)

  得点 失点
1分~15分 2
16分~30分 3
31分~前半終了 4 2
46分~60分 1 1
61分~75分
76分~試合終了 6 2
合計 16 5
1試合あたり 1.60 0.50

 

○日本(45)/アジア予選成績……8勝4分2敗

 ※対戦相手/オーストラリア(20)、バーレーン(69)、ウズベキスタン(94)、カタール(95)、オマーン(97)、タイ(-)

  得点 失点
1分~15分 3 1
16分~30分 5 2
31分~前半終了 4
46分~60分 5 2
61分~75分 2
76分~試合終了 4 4
合計 23 9
1試合あたり 1.64 0.64

 

 こうして並べてみると、デンマークの試合巧者ぶりが浮かび上がってくる。格下のマルタ戦、アルバニア戦では、早い時間帯で点を取って楽に試合を進めた。一方、強敵ポルトガルとの初戦では、83分、88分、92分にゴールを決めて逆転に成功。大詰めのスウェーデン戦(第2戦)も、0-0から78分のゴールで予選突破を決めた。試合の進め方を心得ているチームだ。
 カメルーンは、どうやらスロースターターのようだ。総得点23点のうち、69.6%にあたる16点が後半で得たもの。特に、後半開始直後から20分間が彼らの時間帯で、全得点の47.8%、11点を奪っている。
 そして、オランダと日本。得点する時間帯のパターンはそっくりだ。オランダは昔から、試合運びが下手だと評されることが多い。日本も、同じペースで試合をしすぎると言われることがある。得点する時間帯に偏りがないのは、両チームが試合にメリハリをつけられないことを象徴しているのかも知れない。
 一方、失点が後半、特に最後の15分に集中している点も似ている。ただし、オランダが食らった2失点は、2-0でリードしていたマケドニア戦(77分)と、同じく2-0だったアイスランド戦(88分)。どちらも、試合が決まった後のアクシデントと言い訳できなくはない。ところが日本の失点は印象が悪い。最後の15分で失った4点は、0-0からフバイルのゴールで敗れたバーレーンとの初戦(78分)、3-0でリードしていたのに、イサのゴールと闘莉王のオウンゴールであっという間に2-3とされ大慌てした最終予選のバーレーン戦(87分、89分)、そして、ケーヒルのゴールにより1-2で負けたオーストラリア戦(77分)。どれも、勝負所で手ひどい失点を食らった格好だ。

—-

 日本は後半に弱い。とりわけ、最後の15分が大問題だ。
 そこで日本が勝つためには、いかにしてガス欠を防ぐかが重要になると思う。対策の1つ目は、「本当の意味でのムダ走り」(湯浅健二氏が呼ぶところの「クリエイティブなムダ走り」ではなく)をなくすこと。戦術上の約束事を徹底し、選手の間に信頼の輪をつないで、効率的に走れる環境を整えて欲しい。そして2つ目は、試合中に休める時間帯を作ることだ。0-3で負けたオランダ戦の戦い方を、90分続けるのは絶対に不可能。しかし、60~70分間なら続けられる。であれば、チームとして引いて守る時間帯を決めるなど、どこかで休む時間帯を作るしかない。また、最後の15分を逃げ切る工夫も必要だ。

 そういう意味では、岡田監督が岩政大樹と矢野貴章をメンバーに選んだことを、僕は評価したい。岩政は屈強なディフェンダー、矢野は前戦から体を張って守れるフォワードで、ラスト15分をしのぎ切りたい場面では、十分に役立てるはず。
 休む時間を作る戦術眼について、岡田監督が手だてを講じるのは難しいだろう。ならば、ピッチで戦う選手に期待するしかない。特に、遠藤保仁や中澤佑二など経験豊かな選手には、コーチングで他の選手を引っぱって欲しい。

 ワールドカップ初戦は、6月14日。ちょうど1カ月後に迫っている。ここまできたら、あとは選手を信じて応援するだけだ。

 頼むよ、日本代表!

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