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3分の1以上が引き分けのW杯~元凶は前回より11.5%も低い「枠内シュート率」

南アW杯:イタリア落胆、メディアも 2戦連続引き分けで

 サッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で、20日の格下のニュージーランド戦を1-1で終え、2戦連続の引き分けとなったイタリアでは、メディアが一斉に「また、がっかりさせられた」(ANSA通信)など、まるで負け試合のような論調で失望を伝えた。

(2010年6月21日 毎日新聞)

 イングランドに続き、イタリアも2戦連続の引き分け。ドイツ、スペイン、ポルトガルも調子に乗りきれていない。フランスに至っては、6月21日付けmsn産経ニュース「【W杯】フランス空中分解、選手が練習ボイコット」などで伝えられている通り、監督に暴言を吐いたFWアネルカの強制送還をきっかけに、選手が練習をボイコットしているという。今回のワールドカップは、強豪国にとって受難の大会になっているようだ。
 その最大の理由は、ロースコアゲームが多いことだ。ここまでに29戦が行われ、57のゴールが生まれた。1試合あたりの得点は1.97点。6月14日付け記事「南アW杯1試合あたり得点は1.63~前回より0.81、前々回より1.25も低い」の時点よりは増えたが、前回のドイツ大会(グループリーグの1試合あたり得点は2.44)に比べ、依然として0.47点も低い。
 その結果、実力的に優位にあるはずの国が勝ち切れていない。前回大会のグループリーグにおける引き分け数は、48試合中11試合。引き分けが占める割合は22.9%だった。一方、今回は29試合中10試合、34.5%が引き分けに終わっている。

 その元凶は「シュートが枠に行かない」ことにあるというのが、僕の考えだ。それを証明するために、FIFA公式サイト内にあるスタッツを参照し、これまでに行われた29試合の、両チームあわせたシュート数、枠内シュート数、得点数を集計してみよう。

カード シュート数 枠内シュート数 得点数
南アフリカ対メキシコ  23  10  2
ウルグアイ対フランス  25  6  0
南アフリカ対ウルグアイ  29  9  3
フランス対メキシコ  25  9  2
アルゼンチン対ナイジェリア  31  8  1
韓国対ギリシャ  24  9  2
ギリシャ対ナイジェリア  37  15  3
アルゼンチン対韓国  35  13  5
イングランド対アメリカ  31  12  2
アルジェリア対スロベニア  18  6  1
スロベニア対アメリカ  21  10  4
イングランド対アルジェリア  26  7  0
ドイツ対オーストラリア  26  12  4
セルビア対ガーナ  29  5  1
ドイツ対セルビア  24  7  1
ガーナ対オーストラリア  30  11  2
オランダ対デンマーク  28  10  2
日本対カメルーン  16  9  1
オランダ対日本  19  8  1
カメルーン対デンマーク  36  14  3
イタリア対パラグアイ  18  6  2
ニュージーランド対スロバキア  21  5  2
スロバキア対パラグアイ  17  6  2
イタリア対ニュージーランド  26  8  2
コートジボワール対ポルトガル  12  3  0
ブラジル対北朝鮮  37  13  3
ブラジル対コートジボワール  22  10  4
ホンジュラス対チリ  27  7  1
スペイン対スイス  32  11  1
合計  745  259  57
1試合あたり  25.7本  8.9本 1.97点 
枠内シュート率(枠内シュート数÷シュート数) 34.8%
枠内シュート得点率(得点数÷枠内シュート数)  22.0%

 また、同様にしてドイツ大会のグループリーグ48試合分も集計してみた。こちらは、合計の数字だけ紹介しておく。

  シュート数 枠内シュート数 得点数
合計 1136 526 117
1試合当たり 23.7本 11.0本 2.44点
枠内シュート率(枠内シュート数÷シュート数) 46.3%
枠内シュート得点率(得点数÷枠内シュート数) 22.2%

 「枠内シュート得点率」は、前回が22.2%、今回は22.0%とほとんど変わらない。4.5回の枠内シュートを放つと、1回ゴールが決まるという計算だ。また、1試合あたりのシュート数は、前回の23.7本に比べ、今回は25.7本と多少増えた。それなのに得点数が少なくなっているのは、「枠内シュート率」が前回とは全く異なるからだ。前回は全シュートの46.3%が枠内に飛んでいたのに対し、今回は34.8%と激減。実に、11.5%も下がっているのだ。
 主犯はやはり、公式ボール「ジャブラニ」だろう。今大会では、ゴールを狙ったフリーキックがクロスバーのはるか上を過ぎたり、ロングパスがずれてサイドラインを割るケースが非常に目立つ。各選手がボールをうまくコントロールできていない証拠だ。ボールの扱いづらさゆえに枠内シュートが減り、それに連れて得点も減っているのだと推測する。

 今さら公式ボールを替えるわけにもいかない。今大会は、恐らくこのまま、引き分けやPK戦の多い展開が続くのだろう。

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 ところで、上の表を見て分かるように、両チーム合わせたシュート数が20本未満の試合は6試合。そのうち2つが日本代表戦によって占められている。これは、なかなか示唆に富んだデータだと思う。
 日本の戦略は、豊富な運動量によって激しいプレスをかけ、相手にシュートまで持ち込ませないということ。いわば、「ゴール前でなく中盤で戦う」やり方だ。この2戦の結果を見る限り、それは十分に成功していると言えるだろう。
 得失点差で不利なデンマークは、第3戦に勝つため、最終ラインを高く設定した布陣をとるに違いない。しかし、日本代表は伝統的に、前がかりで攻めてくる欧州のチームに相性がいい。中盤でのプレスが決まりやすくなるからだ。もし、これまでと同じゲームプランが完遂できれば、スコアレスドローによるグループリーグ勝ち抜けも現実味を帯びてくる。

 選手個人の能力からすれば、デンマークの方が多少(いや、かなり?)上なのかもしれない。だが、次の試合に限っては、日本にとって有利な点がいくつもある。懸念されているレギュラー選手のスタミナ切れさえ起こさなければ、2度目の決勝トーナメント進出の可能性、期待をしてもいいのではないか。

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コメント:2

てん 2010年6月23日

グループリーグの1巡目、2巡目を分けてデータを見ると、
1巡目は確かにおっしゃる通り「枠内シュート率」の低下と1試合の平均得点がパラレルですけれども、2巡目は、「枠内シュート率」は1巡目とほぼ同じであるのに、平均得点は、過去3回の大会と同水準です。
もちろん、グループリーグトータルで見ると結果が異なるかもしれませんが、1巡目の25得点が2巡目で42得点に上昇しているのに、「枠内シュート率」に変化が無い、というのは、いささかお説にはネガティヴなデータかと思われますがいかがでしょうか?

白谷 2010年6月23日

てんさん、こんにちは。
初めまして、でしょうか?

>1巡目は確かにおっしゃる通り「枠内シュート率」の低下と1試合の平均得点がパラレルですけれども、2巡目は、「枠内シュート率」は1巡目とほぼ同じであるのに、平均得点は、過去3回の大会と同水準です。

なるほど、そうなんですか。
僕の方では1巡目と2巡目のデータを出していないので、
とても参考になります。
もしてんさんが詳細なデータをお持ちでしたら、
ぜひ拝見できると嬉しいのですが。
そちらを見たら、また新たな発見があるかもしれませんし。

ところで、ご指摘いただいて思ったのですが、
1巡目と2巡目、あるいは3巡目という切り口で、
過去のグループリーグを洗い直してみる方法も有力ですよね。
一般に、1巡目はどのチームも慎重に入り、
2巡目になると、初戦の結果によって
攻勢に出ざるをえないチームが増えて点の取り合いになる、
なんてイメージがありますが、
1、2、3巡目それぞれの得点数の推移を追うと、
そのイメージが裏付けられるかもしれません。
場合によっては、それがただの先入観だったと分かるのかも?

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