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2010年7月13日のアーカイブ

参院選の「1票の格差」是正には、参院廃止または抜本改組が早道

1票の格差5倍超に=千葉法相、69万票でも落選-参院選

 参院選選挙区の落選者で最も多く得票したのは神奈川の千葉景子法相で、69万6739票だった。これに対し、高知の広田一氏は当選者の中で最少の13万7306票で勝利を収めた。「1票の重み」の格差は5.07倍となり、2007年の前回選挙の4.16倍よりも拡大した。定数是正の動きや司法判断に影響を与える可能性がありそうだ。

(2010年7月12日 時事ドットコム)

 70万票を獲得した候補者が落選する一方、その5分の1にあたる14万票しか獲得できなかった候補者が当選。参院選における「1票の格差問題」は、今回も是正されないまま放置されている。
 6月24日付け朝日新聞記事「参院選『一票の格差』、最大5倍超  前回より拡大」によれば、今回の参院選における議員1人あたり有権者数には、最大で5.01倍の格差があったという。これを逆から言えば、「ある地域からは1人しか議員を出せないのに、別の地域からは5人出せる」ということだ。
 総務省の「第22回参議院議員通常選挙関係資料」によると、2010年6月23日現在の栃木県の有権者数は163万7893人。一方、隣にある群馬県の有権者数は163万6130人で、ほぼ同じ規模だ。それなのに、仮に栃木の議員定数が1で群馬が5だったとしたら、U字工事でなくても激怒するだろう。民主主義としては考えられないほどの不平等で、すぐに解消されなくてはならない問題だ。

 ただし、ことはそれほど簡単ではない。
 「1票の格差」を抜本的に解消するためには、いくつかの方法が考えられる。個人的に有望だと思っているのが、最も有権者数の少ない県=鳥取県を1人区とし、鳥取との人口比で他県の議員定数を決めるというやり方だ。そこで、上記の「第22回参議院議員通常選挙関係資料」から各都道府県の有権者数を抜粋し、それぞれを鳥取県の有権者数で割ったのが下の表。
 「定数案」は、各都道府県の有権者数を鳥取県の有権者数で割り、四捨五入して整数にしたもの。「現定数」は、文字通り現時点の定数。ちなみに、参院選において「1人区」と呼ばれる地域では、3年ごとに1人分の議席が改選される。そのため「1人区」には、常に2人の議員が存在することにご注意を。

  有権者数(A) A÷鳥取有権者数 定数案 現定数
北海道 462万1118人 9.47 9 4
青森県 116万3331人 2.38 2 2
岩手県 111万1052人 2.28 2 2
宮城県 191万5501人 3.93 4 4
秋田県 93万0892人 1.91 2 2
山形県 97万0387人 1.99 2 2
福島県 166万5411人 3.41 3 4
茨城県 243万7052人 5.00 5 4
栃木県 163万7893人 3.36 3 2
群馬県 163万6130人 3.35 3 2
埼玉県 584万1781人 11.97 12 6
千葉県 507万1914人 10.40 10 6
東京都 1069万5234人 21.92 22 10
神奈川県 732万8018人 15.02 15 6
新潟県 197万3685人 4.05 4 4
富山県 90万6829人 1.86 2 2
石川県 94万8960人 1.95 2 2
福井県 65万5964人 1.34 1 2
山梨県 70万5902人 1.45 1 2
長野県 176万6697人 3.62 4 4
岐阜県 169万4940人 3.47 3 4
静岡県 309万0689人 6.33 6 4
愛知県 585万5247人 12.00 12 6
三重県 151万1013人 3.10 3 2
滋賀県 110万9884人 2.27 2 2
京都府 210万7617人 4.32 4 4
大阪府 712万3921人 14.60 15 6
兵庫県 456万1826人 9.35 9 4
奈良県 115万8267人 2.37 2 2
和歌山県 85万1823人 1.75 2 2
鳥取県 48万7894人 1.00 1 2
島根県 59万6484人 1.22 1 2
岡山県 158万3048人 3.24 3 2
広島県 233万4828人 4.79 5 4
山口県 121万4504人 2.49 2 2
徳島県 66万1386人 1.36 1 2
香川県 83万3050人 1.71 2 2
愛媛県 120万2881人 2.47 2 2
高知県 64万3985人 1.32 1 2
福岡県 411万7590人 8.44 8 4
佐賀県 69万1531人 1.42 1 2
長崎県 118万2908人 2.42 2 2
熊本県 149万5312人 3.06 3 2
大分県 99万5250人 2.04 2 2
宮崎県 93万7791人 1.92 2 2
鹿児島県 140万6105人 2.88 3 2
沖縄県 108万0383人 2.21 2 2
※全国 1億0451万3908人 214.21 208 146

 上記のやり方で人数を割り振った場合、「1票の格差」は最大で1.5以内となる。これなら、公平性はかなり高められるはずだ。そして、小選挙区制の弱点である「少数意見が汲み取りにくい」という弱点を補うため、ここに比例代表制を組み合わせるのが、最もバランスのいい仕組みなのではないか。

 ただし、問題が3つある。
 1つ目は、上に示した「定員案」の合計が、現在の都道府県選挙区の定員146人を42%も上回ってしまうこと。議員定数の削減が時代の趨勢なのに、それに逆行する動きが許されるだろうか。2つ目は、鳥取県の定数を1とした場合、「3年に1度の改選」という参議院の前提が崩れてしまうこと。こちらは、「3年に1度の改選」をやめ、「6年に1度の総選挙」というやり方で解決できるが、そうすると3つ目の問題が浮かび上がる。それは、「小選挙区+比例選を、6年に1度行う」という枠組みが、衆院選の選挙制度と大差なくなってしまうという点。二院制は、両院の代表の選び方が異なり、それぞれの構成員の層が違っているからこそ意味があるのだ。衆議院のコピーに過ぎない参議院など、百害あって一利もない。
 県境をまたいだ選挙区を作るという解決法も考えられる。例えば、鳥取県と島根県を合わせて1人区にしてしまうなどだ。しかし、議員とは地域の利害を代表する存在でもある。複数の県を含む選挙区から選出された議員を選ぶなら、ブロックごとに比例代表を選ぶ仕組みと大差ない気もする。

 つらつら考えると、「1票の格差」の是正と議員定数削減を両立するのはかなり難しい。そこでいっそのこと、参議院は廃止、もしくは、衆院に対する諮問機関のように改組する。そして、上で提案した「鳥取県を定数1とした小選挙区制+少数意見をすくい上げるための比例代表制」という仕組みは、衆院選で行えばいいというのが、僕の意見だ。
 例えば、北海道+東北(総有権者数1238万人)、東京以外の関東(2395万人)、東京(1070万人)、北陸+中部+東海(1911万人)、近畿(1691万人)、中国+四国(956万人)、九州・沖縄(1191万人)といった道州制を敷き、各地域が自由に選んだ議員(例えば、各地域10~20人程度、合計100人などのように)を「参議院議員」とする。そして、参議院は衆議院の可決した法案を否決できず、修正のみ行う。ただし、憲法改正など一部の項目のみ否決権を持つという仕組みにすればいい。そうすれば、「ねじれ現象」が起こったときの政治的混乱も最小限に抑えられるし、憲法改正などの重要法案では「良識の府」という役割を果たせる。

 参議院の廃止、もしくは抜本的な改組。十分、検討に値する議題だと思うのだ。ただし、その担い手が、定数削減で大きな痛手を被る現職議員であるという点が悩ましいところ。国会以外の場で議論をもっと盛り上げ、議会を動かしたいところだ。

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