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2010年7月26日のアーカイブ
日本の囲碁・名人戦の持ち時間は、世界戦に比べて2.67倍も長い
- 2010年7月26日 23:50
- ニュースな数字
世界囲碁名人争覇戦、井山名人が敗退
日中韓3カ国の「名人」のタイトルを持つ棋士が競う「中国常徳杯・世界囲碁名人争覇戦」(人民日報社、中国囲棋協会主催、朝日新聞社後援)の第2戦は25日、中国湖南省常徳市で打たれ、中国の古力(クー・リー)名人(27)が日本の井山裕太名人(21)に白番4目半勝ちした。これで井山名人の敗退が決定した。
国際棋戦で、また日本の棋士が敗れた。
上の記事によれば、井山名人は「途中までは僕のほうが形勢が良かったと思う。決め手もあったはずだが、秒読みになってから何度もミスをしてしまった」と話しているそうだ。
世界囲碁名人争覇戦の持ち時間は、各3時間となっている。これに対し、日本における名人戦の持ち時間は各8時間で、世界戦より2.67倍長い。持ち時間に対する感覚のずれが、井山名人の敗因の1つであった可能性は否定できない。
日本、韓国、中国には、それぞれ「7大棋戦」と呼ばれるタイトル戦がある。それらの持ち時間と、代表的な国際棋戦の持ち時間をまとめたのが下の表だ。情報は全て、井上徳昭さんが運営しているサイト「囲碁データベース」を参照させていただいた。
| 棋戦名 | 持ち時間 | |
| 日本 | 棋聖戦 | 8時間 |
| 名人戦 | 8時間 | |
| 本因坊戦 | 8時間 | |
| 十段戦 | 4時間 | |
| 天元戦 | 3時間 | |
| 王座戦 | 3時間 | |
| 碁聖戦 | 4時間 | |
| 韓国 | 名人戦 | 2時間 |
| 電子ランド杯・王中王戦 | 10分 | |
| GSカルテックス杯プロ棋戦 | 3時間 | |
| 十段戦 | 10分 | |
| 国手戦 | 3時間 | |
| 物価情報杯プロ棋戦 | 10分 | |
| バッカス杯・天元戦 | 1時間 | |
| 中国 | 倡棋杯プロ棋士戦 | 3時間30分 |
| 天元戦 | 3時間 | |
| 阿含桐山杯・早碁オープン戦 | なし(1手30秒) | |
| NEC杯・早碁戦 | なし(1手30秒) | |
| リコー杯囲碁戦 | 3時間 | |
| 招商銀行杯・中国圍棋電視快棋戦 | なし(1手30秒) | |
| 名人戦 | 3時間 | |
| 国際棋戦 | 応昌期杯・世界プロ囲碁選手権戦 | 3時間30分 |
| BCカード杯世界選手権戦 | 2時間 | |
| LG杯・世界棋王戦 | 3時間 | |
| 三星火災杯・ワールド囲碁マスターズ | 2時間 | |
| 春蘭杯・世界プロ囲碁選手権戦 | 3時間 | |
| 富士通杯・世界囲碁選手権戦 | 3時間 |
ご覧の通り、国際棋戦の持ち時間は2~3時間というところが多い。韓国・中国でも、早碁を除いた棋戦の持ち時間は、3時間制が中心だ。これに対し、日本のタイトル戦の持ち時間は長い。とりわけ、棋聖戦・名人戦・本因坊戦の3大タイトルは、どれも2日制・持ち時間各8時間で行われている。3時間という持ち時間に不慣れな点は、国際棋戦に出場する日本の棋士にとって、かなりの足かせになっているのだ。
しかし、国際棋戦に合わせて2日制のタイトル戦を廃止する必要は、全くないと思っている。なぜなら、2日制タイトル戦には、日本独自の「囲碁観」が反映されているからだ。
韓国・中国における囲碁は、「勝負」であり「競技」だ。彼らは限られた時間のなかで、「最善手」ではなく「相手に勝つための手」を繰り出し、徹底して勝負にこだわる。序盤の、いくら考えてもきりがないような局面で、無駄に時間を使うことは少ないという印象だ。
これに対し、日本の囲碁は「芸」の色合いが濃い。局面での最善手を求め、時に序盤でも湯水のように時間を使う。その代表格が、昨年亡くなった梶原武雄氏だろう。2日制の対局で1日目に9手しか打たず、「今日の蛤は重い」とつぶやいたエピソードは有名。Wikipediaで紹介されている「碁は序盤こそが学問、中盤は戦争屋に、終盤は能吏にまかせておけばよい」というセリフも、いかにも梶原先生らしいものだ。勝負よりも、美しい碁を打つ方が、優先順位はずっと高いのだ。
このあたりの事情は、総合格闘技とプロレスとの関係に似ている。ロマンを大切にするプロレスは、勝利だけを一直線に求める総合格闘技に駆逐されかけた。だが、テレビのゴールデンタイム枠から追い出されても、プロレスを愛する人はまだまだたくさんいる。僕も、国際棋戦の流れから遅れていようが、2日制にこだわる日本の囲碁が好きなのだ。
もちろん、韓国や中国の棋士に、日本の棋士が負け続けるのはつらい。藤沢秀行、林海峰、大竹英雄、加藤正夫、石田芳夫、武宮正樹、小林光一、そして趙治勲といった巨人たちが激しく争っていた1980年代のように、日本の囲碁界が輝きを取り戻して欲しい。そのためには、井山名人と同世代のライバルが、国内にもう1人登場することが必要。20歳前後で、韓・中の若手に対抗できる有望株が現れることを、心から期待している。
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