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埼玉県の人口当たり研修医数は東京都の28.2%~医師不足、負の連鎖は続く

臨床研修:10年度の研修医採用、都市部集中続く 6都府県で47.8%

 厚生労働省は15日、10年度の新人医師の臨床研修について、都道府県別の採用実績を発表した。総採用者数7506人のうち、東京1305人▽大阪578人▽神奈川562人--など都市部の6都府県で47・8%を占めた。連携して多彩な研修プログラムを用意した富山、石川、福井の北陸3県が09年度より18~24人増えるなど地方でも採用を伸ばした県があったが、多くは伸び悩み、研修医の都市部集中が続いている。

(2010年9月16日 毎日新聞)

 上の毎日新聞記事は、研修医が都市部に偏在していると報じている。
 なるほど、確かに人数だけで見れば、東京都、大阪府、神奈川県の研修医数は多い。しかし、これらの地域は人口そのものも多いのだ。診療への需要が大きい地域に研修医が集まるのは、当たり前のこと。そこで、上の記事で紹介された研修医数を各都道府県の人口で割り、10万人あたりの人数を算出してみたのが下の表だ(都道府県人口は、総務省統計局「人口推計(平成21年10月1日現在)」のデータを使用)。

人口10万人あたりの研修医数
  都道府県 研修医数
1位 東京都 10.1人
2位 京都府 9.4人
3位 沖縄県 8.8人
(全国平均) (5.9人)
46位 茨城県 3.3人
47位 宮崎県 3.1人
48位 埼玉県 2.9人

 人口当たり研修医数が最も少なかったのは、人口ランキング5位の埼玉県。最多だった東京都の、わずか28.2%に過ぎない。一方、人口当たり研修医数第3位は、人口ランキング32位の沖縄県。さらに、第4位に人口ランキング43位の福井県、第5位には人口ランキング35位の石川県が続いている。これでは、「研修医が都市部に集中」と表現するのは無理があるだろう。

 むしろ、これらの地域の研修医不足は、下表と相関関係があると思うのだ。

人口10万人あたりの医療施設従事医師数
  都道府県 医師数
1位 京都府 279.2人
2位 徳島県 277.6人
3位 東京都 277.4人
(全国平均) (212.9人)
46位 千葉県 161.0人
47位 茨城県 153.7人
48位 埼玉県 139.9人

 こちらは、厚生労働省の「平成20年医師・歯科医師・薬剤師調査」の「人口10万対医療施設従事医師数の年次推移」から、上位・下位3都府県を抜粋したもの。上位・下位ともに、人口あたり研修医数ランキングと顔ぶれが似ている。つまり、研修医が少ない地域は、医師の数も少ないのだ。

 背景には、いくつかの可能性が考えられる。研修医を受け入れられる大規模な診療施設が、これらの地域では不足しているのかもしれない。あるいは、健康な人が多く、患者そのものが少ない可能性だってあり得るだろう。しかし、最大の理由は明らかだ。研修医は、過酷な労働環境を敬遠しているのである。

 日本医療労働組合連合会の「医師の労働実態、施設調査関連資料(2007年4月24日)」によると、研修医の平均労働時間は、週64.7時間。法定労働時間が週40時間であることを考えると、かなり過酷な労働条件と言える。
 労働時間は長い。そして、仕事柄、担う責任は非常に重い。ただでさえ、研修医は大変な仕事だ。その上、医師の数が少ない地域に行ったらどうなるか。労働条件がさらに厳しくなるのは、目に見えている。

 埼玉県などでは、「医師不足→医師の労働環境悪化→研修医離れ→さらなる医師不足」という負の連鎖が続いているのだろう。この流れを止めるために、医師不足地域での保険診療点数の加算など、若い医師向けのインセンティブが検討されてもいいのではないかと思う。

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コメント:6

BLITZ 2010年9月17日

千葉、埼玉が少なく、東京が多いのは、東京で研修医になるケースが多いからでは?

根拠もなく、単に数字から。

白谷 2010年9月17日

BLITZさん、こんにちは。
>千葉、埼玉が少なく、東京が多いのは、東京で研修医になるケースが多いからでは?
その可能性は高いですね。
待遇がいいのか、研修医が学びやすい環境があるのか。
あるいは、実家が近いからかもしれません。
(薬剤師は、「東京に在住者<東京在勤者」なんですが、
医師と歯科医師は、「東京在住者>東京在勤者」なんですよ。)
僕は、勤務が過酷(僕の想像に過ぎませんが)な埼玉や千葉を
敬遠している可能性もあると思っています。

匿名 2010年9月20日

白谷さんこんにちは。時々おじゃましているくまです。
関東の場合、東京に日本屈指の医療センターが集中し過ぎているからではないでしょうか。若い研修医なら、早く一人前としてやっていけるという実力を付けたいでしょうし、もっと言えばトップレベルの能力を身につけ、自信を持てて将来への担保たる技術を持ちたいでしょう。
そうするとやはり東京に日本の超一流医療機関がそろっており、選択できるならそこに行きたいでしょう。さら超一流に行けなくても、いつでも超一流と自在に交流できる場所に居たいと思うのは分かります。
さらに、芸術・文化・スポーツの重要な施設や大会も東京に多く集まり、関東一円の重要施設も東京からの方が交通の便も良く行きやすいです。し、オフに海外旅行に行くのも羽田ですよ。
え、嫉妬してるですか?って、ええ妬いてます妬いてますよ。
今の状況なら頼みもしなくても各地から東京に集まってくるんです。一票の格差なんか少しくらい是正しても追い付きません。利便性もステータスも全部東京にあるんです。埼玉・神奈川など東京目当てなんです。ユカタン半島の地下にある隕石のような重力歪をもたらす何かが東京にあるんです。
関西の薬剤師だってそうで、条件的には優遇された若い地方勤務薬剤師が1年持たずに神戸大阪京都などの都会に逃げ出すそうですから、東京近郊ならなおの事でしょう。
長文コメント失礼いたしました。

白谷 2010年9月20日

くまさん、こんにちは。
.
確かに、東京への一極集中は行きすぎだと、僕も感じてます。
例えばアメリカなら、ニューヨーク以外の都市も栄えてますよね。
ワシントン、ロサンゼルス、サンフランシスコ、シカゴ、
ダラス、シアトル、ボストン……。
それぞれの都市に産業や文化があるのが素晴らしいと思います。
.
東京への一極集中を是正するには、どうすればいいんでしょうね?
国会や中央省庁、裁判所、証券取引所、国立大学などを、
各地域に分散させれば、ずいぶん効果が上がる気がします。
あるいは、企業が地方に移りたくなるようなインセンティブ
(例えば、東京以外の法人税だけを10%引き下げるなど?)を
用意するのも効果的かもしれません。
.
くまさんには、なにかお考えがありますか?
あれば、ぜひお教えください。

くま 2010年9月21日

お言葉に甘えて思いつきですが以下の事を考えました。
道州制、中央省庁分散、地域主義(人口主義ではなくて)を考えてみました。
でその前にまず実施するのは宮内庁と皇居を京都に移すことです。道州制で何分割かにする訳ですが、大ニ分割として大地溝帯で東西を分け、国の精神的支柱である国会と皇居を別にするのです。それだけで政治経済の風景はと精神的な風景が大きく変わるはずです。道州制は現状の人口比ではなく、単純に面積比で考えて行きます。一漁村の横浜が大都会になったように現状の人口比はあてになりません。人口比でものを考えず、地域で考える。権限をしっかりと移譲した上でなら、頑張った道州に人は集まって行くはずですからね。それから官庁分離するなら沖縄に外務省を持って行けば良いのです。沖縄に重要省庁を持って行けば沖縄の方々にとってそこが精神的な落ち着きをもたらすでしょう。防衛省は北海道とか北九州でも良いでしょう。とにかく長細い日本列島の真中になにもかも置くのはメタボそのものです。糖尿病ご動脈硬化を起こしているんですよ。そう思います。

白谷 2010年9月21日

くまさん、コメントありがとうございます。
「沖縄に重要省庁を」という案、素晴らしいですね!
人間は、経験しなければ想像力が働かないもの。
官僚の皆さんが沖縄で暮らせば、
沖縄の人々が日々抱えている緊張感などが実感できますよね。
僕は、東京大学・一橋大学・東京工業大学も、
それぞれ地方に移転するといいと思います。
知的エリートが、地方で青春を過ごすことは、
彼らの「東京一極集中」意識を変えることに
直結するんじゃないかと思うんです。
次の選挙では、省庁などの地方移転を政策に掲げる政治家に
注目することにしますね。

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