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牛丼3社の価格競争により、他の外食企業の顧客が1億人も奪われている?

吉野家11月8・2%減収 客数増えるも単価減少

 吉野家ホールディングス(HD)が9日発表した傘下の牛丼チェーン「吉野家」の11月の既存店売上高(速報)は、前年同月比8.2%減となり、2カ月連続のマイナスとなった。9月に低価格メニューの「牛鍋丼」を投入、売上高が19カ月ぶりにプラスに転じたが、10~11月は昨年に実施したセールの反動も出た。その意味ではセール効果の息切れで昨年は大幅減を記録した12月に再びプラスに転じられるかが最大の注目。ライバル2社がプラス基調なだけに、吉野家には正念場となりそうだ。

(2010年12月9日 msn産経ニュース)

 牛丼業界で続く、激しい競争。その中で吉野家が売り上げを落とし、「独り負け」と呼ばれるようになって久しい。
 吉野家の売り上げが伸びない理由の一つは、「価格」だ。下の表は、吉野家ホールディングスの「月次報告(吉野家)」ページ、ゼンショーの「すき家前年比 月次推移」ページ、松屋フーズの「月次報告」ページから、各社の既存店売上高、客数、客単価の対前年度比を抜き出したもの。

    2008年度 2009年度 2010年度上期
吉野家 売上高 97.4% 91.6% 86.7%
客数 96.8% 90.8% 88.8%
客単価 100.6% 100.9% 97.6%
すき家 売上高 98.4% 97.0% 123.1%
客数 97.9% 103.6% 137.6%
客単価 100.5% 93.7% 89.5%
松屋 売上高 100.4% 96.4% 105.3%
客数 96.3% 101.5% 118.0%
客単価 104.3% 94.9% 89.3%

 すき家と松屋の経営方針は、とても似ている。不況の影響をもろに受けた2009年度は、客単価を5%以上も下げて前年以上の客数を確保。2010年度上期は、客単価をさらに10%以上下げて「価格競争」を展開した。その結果、来店客数を大幅に伸ばすことに成功し、売り上げアップにつなげたのだ。
 一方、吉野家の客単価は、この間ほとんど変わっていない。価格競争から距離を置く戦略をとったのだ。その結果、ライバル2社に顧客を奪われ、売り上げは大きくダウンした。これが「独り負け」と呼ばれるゆえんだ。

 確かに、吉野家は「負け」と呼ばれても仕方のない状態だ。何しろ、2010年度上期の既存店1店舗あたり売上高は、2007年度に比べて22.6%も落ち込んでいる。しかし、負けているのは吉野家だけだろうか? 僕は、「負け組」はこれ以外にもいると思う。それは、「3社以外の外食企業」だ。

 吉野家の2009年度売上高は1022億円。同社は来店客数を公表していないが、仮に客単価を500円とすると、1022億円÷500円=2億0440万人となる。ゼンショー傘下のすき家となか卯の2009年度売上高は1294億円。こちらは客単価450円と仮定すると、来店客数は1294億円÷450円=2億8756万人だ。そして、松屋の2009年度売上高は624億円。こちらも客単価450円とすると、来店客数は624億円÷450円=1億3867万人。
 仮に、2010年度における各社の来店客数が、2010年度上期と同じ水準で終わるとしよう。すると、吉野家の来店客数は、2億0440万人×11.2%=2289万人減となる。これに対し、すき家・なか卯は1億0812万人増、松屋は2496万人増。3社の来店客数を合計すると、1億1019万人の増加という計算だ。逆に言えば、3社は他の牛丼店、そして外食・中食産業などから、1億人規模の顧客を奪っているわけだ。「負け組」は、吉野家だけではない。他にも、おびただしい数の競合店が、すき家や松屋によって負かされているのである。

 すき家と松屋にしたって、果たして「勝っている」と言えるのか? 客単価が下がれば、その分、原価率が高くなり、利益を圧迫するのは明らかだ。また、増えた客をさばくために人件費がかさむ危険性もある。売り上げが伸びても、利益に結びつくかどうかは別問題だ。

 日本フードサービス協会の「外食産業データ」ページによれば、外食産業全体の既存店売上金額は、1999年から2008年までの間に22.6%減少している。このまま価格競争だけが激化すれば、全外食産業が共倒れしかねない。それは、消費者にとっても不幸なことだろう。
 もちろん、現在は価格を重視せざるを得ないご時世だ。しかし、外食企業も消費者も、価格以外の価値基準をもっと重視してほしいと思う。それが、皆がそろって幸せになれる方法なのだ。

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