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企業の採用抑制だけでなく「学生の質の低下」も就職難の原因?

社説:大卒内定率68.8% 大寒波で春が見えない

 東京・神田のすし店が求人を出したところ4年制大学の学生が何人も面接にやってきたという。「あんたらが働くところじゃないよと断ったが、こんなことは初めてだ」と店主は驚いていた。
 新卒者の就職難は今年に始まったわけではない。しかし、今春卒業見込みの大学生の就職内定率は68.8%、短大生は45.3%(いずれも昨年12月1日現在)。データが残る96年以降で最低という。企業業績の回復が伝えられる中、凍りつくような就活戦線である。

(2011年1月19日 毎日新聞)

 文部科学省の報道発表「平成22年度大学等卒業予定者の就職内定状況調査(12月1日現在)及び厚生労働省との連携による未内定者に対する『卒業前の集中支援』の実施について」によると、大学卒業予定者の2010年12月1日時点における就職内定率は68.8%。「社会実情データ図録」の「就職(内定)率の推移(大学)」に示されているとおり、これは1996年以来、最低の水準だ。

 上で紹介した毎日新聞の社説では、「就職難」の原因として、企業による新規採用の抑制を挙げている。確かに、不況によって採用人員数を絞った企業は少なくない。だが、悪いのは企業だけだろうか? 僕は、学生側にも問題はあると見ている。

 下の表では、文部科学省の「学校基本調査」や「教育白書」を元に、1990年以来の大学(学部)卒業者数、大卒就職者数をまとめてみた。また、各年代の高校卒業者数(2010年大卒者の場合、2006年の高卒者数)と、大卒者数を高卒者数で割った数字も掲載している。

  大卒者数(A) 大卒就職者数 4年前の高卒者数(B) A÷B
1990年度 40万0103人 32万4164人 162万0425人 24.7%
1995年度 49万3277人 33万0998人 180万3219人 27.4%
2000年度 53万8683人 30万0687人 155万4549人 34.7%
2005年度 55万1016人 32万9045人 132万6844人 41.5%
2006年度 55万8184人 35万5778人 131万4809人 42.5%
2007年度 55万9090人 37万7734人 128万1334人 43.6%
2008年度 55万5690人 38万8417人 123万5012人 45.0%
2009年度 55万9539人 38万2434人 120万2738人 46.5%
2010年度 54万1428人 32万9132人 117万1501人 46.2%

 2010年、大学を卒業して企業に就職したのは32万9000人。前年より5万3000人も減った。これだけ見ると、「企業による採用抑制説」は正しそうだ。しかし、2005年以前の大卒就職者数は、概ね30万人~33万人程度で推移しているのだ。長期的な視点で見れば、企業は採用数を絞っているとは言えない。
 企業の景況感は、底を打った。それに伴い、人材需要も徐々に改善しつつあるのだ。特に、ベンチャー企業やアジア進出を目指す企業などでは、人材を積極的に求めていると聞く。
 しかし採用は、頭数だけ揃えればいいというものではない。会社の基幹を担える、能力の高い人材こそ、企業が求めるものなのだ。そこには、絶対に譲ることのない「一定のレベル」というものが存在する。

 一方、大学卒業というハードルは、年々低くなっている。1986年の高校卒業者は162万人。1990年の大学卒業者は32万人だった。当時は、高校卒業者の4人に1人しか大学を卒業できなかったわけだ。これに対し、2006年の高校卒業者数は117万人、大学卒業者は54万人。高校卒業者の2人に1人近くは、大学を卒業したたことになる。
 こうした状況で起こりうること。それは、大学生の質の低下だ。2010年5月15日付け読売新聞記事「大学生、高校で補習…埼玉の高・大が連携」は、一つの典型だろう。一昔前なら大学入試を通過できなかったはずの人が、今は大学に進むことができる。その結果、「コミュニケーション能力」や「論理的思考能力」以前に、読み書き計算といった基礎的な能力すら怪しい大学生が、明らかに増えているのだ。もちろん、「学力の高さ」と「優秀さ」は等価ではない。しかし、満足な文章も書けず、計数感覚も乏しい大学生が優秀なビジネスパーソンに成長する可能性は、きわめて小さい。

 企業が求める人材のレベルと、大学が供給する人材のレベルとのミスマッチは、年々拡大している。有り体に言えば、一定レベルに達していない大学生が増えているのだ。2011年1月20日付けSankeiBiz記事「ソニー、新卒採用の30%を外国人に アジアから採用拡大」のような動きも、優秀な日本人大学生が減り、人材を外国人に求めざるを得ない状況を象徴しているのだろう。

 企業に文句を言うのはたやすい。しかし、それだけでは問題の解決にはならないのだ。企業が求める人材像と実際の大学生の間に、どんなミスマッチがあるのか。ミスマッチを埋めるため、大学生や大学はどのように対処すればいいか。そうした振り返りこそが大事だ。
 一方、企業には、大学生が成長できる機会を数多く提供することを求めたい。インターンシップの充実、留学などを目指す学生に対する援助の拡大、学生にとって励みになるコンテストの開催……。そうした施策によって優秀な日本人学生が増えれば、企業にとっても、大きな利益につながると思う。

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