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名古屋の議員報酬半減案は、優秀な人材を議会から遠ざける愚策では?

民主・名古屋市議団、報酬半減案賛成へ転換

 6日投開票された出直し名古屋市長選と市議会解散の賛否を問う住民投票の結果を受け、民主党の前市議らは8日、同党市議団会議を開き、これまで反対してきた市議報酬800万円への半減案について、「民意を尊重すべきだ」として賛成することを決めた。

(2011年2月8日 読売新聞)

 愛知県と名古屋市で行われた「トリプル選挙」は、河村たかし・現名古屋市長陣営の圧勝に終わった。市議会議員報酬の半減を主張していた河村氏が勝利したことで、ついに議会も折れ、半減案の受け入れを決めたようだ。

 名古屋市議会の定員は、現時点で75人。議員報酬額は1600万円だから、総報酬額は75人×1600万円=12億円となる。一方、河村氏の主張が通り、議員報酬が800万円に、定員が38人に削減された場合、総報酬額は38人×800万円=3億0400万円。約9億円の削減だ。
 9億円という金額は、決して小さくない。名古屋市サイトの「平成22年度予算」ページによれば、同市は2010年度、民間特別養護老人ホームの整備補助に10億5300万円を、延長保育事業に10億5800万円を支出している。議員報酬削減で浮いたお金をこれらに回せば、予算は倍増。その分、市民サービスは充実するだろう。

 だが僕は、議員報酬を半分に減らす政策には反対だ。年間800万円という報酬では、優秀な人材を集められないと思うからだ。

 国税庁の統計情報「民間給与実態統計調査」によると、2009年の民間企業における平均給与は406万円。年収が800万円を超える給与所得者は、全体の8.0%しかいない。それだけ見れば、「年収800万円」は、それなりに高く思えるかもしれない。
 しかし議員には、給与所得者にはないリスクがあるのだ。数年に1度、選挙によって職を失う危険性があるし、仕事はもちろんプライベートでも、一般人なら経験することのないプレッシャーにさらされる。時には、いわれのない恨みを買うことだってある。僕から見れば、リスクとリターンのバランスがこれほど悪い仕事も珍しいと思う。この上、議員報酬を半減したらどうなるだろうか?

 今、日本の地方自治体は、どこも厳しい状況だ。少子高齢化で財政は悪くなる一方だし、不景気から抜け出せない地域も多い。だからこそ、地方議会は、知識と経験、コミュニケーション能力などを高いレベルで兼ね備えた人材を必要としている。ところが、こうした人は民間企業でも、それなりの待遇を得られるのだ。優秀な人が好待遇を捨て、議員というリスクの高い仕事を選ぶだろうか? 可能性は、残念ながら低いはずだ。
 議員報酬の引き下げは、優秀な人材を地方議会から遠ざけてしまうだろう。そして議会には、議員報酬に頼る必要のない財産家と、能力の低い議員だけが残る。短期的には経費を圧縮できても、長期的に見れば失うものが多いに違いない。せめて、名古屋市の場合は議会の定員を20~30人程度に抑え、報酬は現在と同程度に据え置く方がまだいいと思うのだが、いかがだろうか?

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コメント:2

小林昇造 2014年7月15日

そうでしょうか?800万円の収入以外に政務調査費やその他で十分歳費は賄えるはずです。また毎日議会に通勤するわけではないでしょう。当然の減額です。

白谷 2014年7月16日

小林さま、コメントありがとうございます。
ただ、私としては、小林さまのご意見には賛成できません。

この問題については、「議員になる側の気持ち」を想像してみることが重要だと思います。仮に、「民間企業なら年収1000万円以上が期待できる能力を持つ人」がいるとしましょう。彼にとって、地方議会の議員という仕事は魅力的に映るでしょうか?
確かに、「地方の役に立てる」というやりがいは得られるでしょう。ただ、地方議員という仕事には、それを上回るリスクがあるというのが、私の考えです。選挙で落選したら、いきなり無職になってしまいます。政争などに巻き込まれ、自分や家族が危険にさらされる危険性もあるでしょう。公人として周囲から監視されることも、かなり負担になると思います。
一方、報酬の面ではどうでしょうか? なるほど、年1600万円という報酬は魅力的でしょう。労働時間も短いので、「見た目の時給」は高いかもしれません。ただ、前述のように数年ごとに失職のリスクがありますし、継続的に当選しようと思えば、選挙活動や地域活動にそれなりの投資が必要。また、労働時間は短いかもしれませんが、その合間に他の仕事をするというのもなかなか難しいでしょう。総合的に見ると、実力のある人ほど「地方議員なんてやるより、民間企業で働く方がいいや」という判断になるのではないかなあ、と。

逆に、800万円の収入でも構わないから地方議員を目指す人とはどんなタイプか、考えてみました。
(1)報酬などどうでもいいから、地方のために役立ちたいと考える人
(2)報酬など問題にならないほどの財産を、既に持っている人
(3)能力が高くなく、民間企業では低い年収しか得られないため、地方議員の報酬に魅力を感じる人
(4)「議員」という肩書きに、とにかく魅力を感じている人
(5)議員になることで、本業に利益のある人(いわゆる「族議員」のような)
いかがでしょう? (1)以外は、正直言って遠慮したいタイプですよね。

今後の地方議会には、優秀な人を集めなければまずいと思います。特に首都圏以外では、議会と役所がタッグを組んで魅力的な地方自治体を作らなければ、人口流出に歯止めがかけられないのではないかと。その意味で、議員の報酬引き下げは愚策だと、私は考えているのです。

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