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iPad向け新聞の購読料は現在の4割程度になるかも?

iPadで新聞・雑誌の定期購読 料金の3割アップルに

 米アップルは15日、タブレット型端末「iPad(アイパッド)」や携帯電話「iPhone(アイフォーン)」向けに、新聞や雑誌などを定期購読できるサービスを始めたと発表した。
(中略)
 新聞社・雑誌社にとっては購読者を増やす機会が増えるが、この仕組みを使って獲得した購読者の購読料の30%はアップルに入ることになる。また、新聞社や雑誌社がウェブサイトなどを使い自前で購読者を獲得する場合の購読料は、アップルとの契約により、アップストア経由より安く設定することが認められない。

(2011年2月16日 朝日新聞)

 2010年7月20日付け当ブログ記事「電子書籍の普及は、埋もれていた書物の発掘をもたらす!」で、僕は「書籍の売り上げのうち、1割が著者、2割が出版社、3割が取次と書店、4割が印刷・製本会社に渡る」と書いた。出版物の形式・分野などで割合は多少異なるだろうが、この原則はほとんどのケースで通用するはずだ。
 おおざっぱに言えば、出版物の中身を作るための経費が3割。印刷・製本工程と完成品を流通させる経費が7割だ。だから、電子出版が普及し、印刷・製本と流通工程を省ければ、出版物の価格を安くしたり、著者の取り分を増やすことが可能なのだ。

 僕は、新聞業界については明るくない。しかし、事情は出版業界とそれほど変わらないだろうと考えている。

 例えば、上で紹介した記事を掲載している朝日新聞社を例に取ってみよう。Laflaが運営する有価証券報告書オンライン閲覧サービス「有報リーダー」に掲載されている、朝日新聞社の「売上原価明細書」によれば、同社の2010年3月期売上原価合計は2183億円。このうち、材料費が482億円(22.1%)、印刷費が421億円(19.3%)を占める。合わせて41.4%。これは、出版業界の「印刷・製本工程で4割」と、ほぼ同水準だ。
 さらに、新聞業界では「戸別宅配制度」が敷かれている。この仕組みは、書店による流通よりはるかに人件費がかかる。朝日新聞広告局サイトの「朝日新聞はどんなメディア?」ページによれば、同紙の発行部数は796万部。1人の配達員が300部ずつ配ると仮定すると2万6500人、500部ずつ配るとしても1万5900人ほどの人員が必要だ。こうした販売網を維持するには、少なく見積もっても数百億円。下手をすると、1000億円以上の費用がかかるのではないか。
※このあたりの文章は、かなりの部分を推測に基づいて書いています。新聞の原価について詳しい方がいたら、ぜひ、詳細をご教示いただけるとありがたいです。

 仮に、新聞業界でも出版業界と同様に、「編集・制作工程に3割、印刷・流通工程に7割」という比率が成立しているとしよう。そして、朝・夕刊セットの新聞購読料を月4000円と仮定する。すると、編集・制作工程の分け前は1200円、印刷・流通工程は2800円だ。ここで紙への印刷と個別宅配制度を取りやめ、電子新聞の発行のみに切り替えると、2800円の部分はカットできる。その分アップルに、売り上げの3割を差し出さなければならないわけだ。

 その場合、新聞の購読料をxと置くと、このような式が成り立つ。

x=1200円(編集・制作工程の取り分)+x×30%(アップルの取り分)

 これを解くと、xは1714円ということになる。現状の月額4000円より、6割近く購読料を引き下げられるわけだ。

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 もちろん、これが机上の空論に近いことは承知している。既存の新聞が紙を捨て、電子新聞に完全切り替えを図れば、仮に購読料が6割引きになったとしても販売部数は激減するだろう。それに伴い、新聞社が得ている広告料も大きく落ち込む。また、印刷・流通部門を切り捨てるということは、この部門の従業員を数万人単位で解雇するということだ。それほどの大手術、おいそれとは踏み切れまい。
 しかし、現在の新聞のビジネスモデルは、破たんへ向かってまっすぐに進んでいる。近い将来、多くの新聞社はコスト削減のため、自前の印刷工場、流通網を捨てるはずだ。また、倒産の危機に直面する新聞社も、少なからず現れるだろう。抜本的な外科手術は、どのみち、いつかはしなくてはならないのだ。

 そういう意味では、現時点で経営危機に陥っている新聞社こそ、逆にチャンスなのかもしれないな。印刷・流通部門という重しを捨て、記事制作に特化した電子新聞社としてのノウハウをいち早く積めば、生き残る可能性は高まるだろう。

 すでに海外では、こうした動きが表面化している。2011年2月3日付けSankeiBiz記事「iPad向け有料電子新聞 マードック氏のニューズ、年39ドル」で紹介されているように、アメリカでは週あたり購読料が80円という低価格の電子新聞が登場。このような「コンテンツ特化型電子新聞社」は、日本でも広まる可能性が高いと見る。

 売り上げを落としている全国紙あたり、近々に思い切った改革を行うのではないか。個人的には、そんな風に注視している。

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