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地震発生後15分間の行動が、津波被災者の生死を分けた

大津波まで30~40分 揺れ直後に避難決断

 東日本大震災の大津波により岩手県北で最大の被害を受けた野田村では、多数の死者、行方不明者が発生し、21日現在も懸命の捜索が続いている。一方で無事だった住民は揺れの後に数百メートル歩いて村の指定する避難場所や高台などに避難した人が多い。時間があったのに逃げなかった人もおり、津波への警戒心が明暗を分けたとみられる。

(2011年3月22日 デーリー東北新聞)

 3月11日15時25分、僕はツイッターにこんなツイートを投稿した。

「津波は見物するようなものじゃない!とにかく、高いところへ!」

 このときの気持ちは、今も忘れられない。テレビには、海に近い高架道路の上で津波の様子を眺めている人々の姿が映されていた。ふくれあがる海に巻き込まれていく人や車を見て、僕はただ、キーボードを打つことしかできなかった。鉛を飲むような気分とは、こういうことを言うのだろう。

 警察庁の広報資料「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」によれば、震災による死亡・行方不明者は、3月22日18時現在で2万2641人。2011年3月19日付け読売新聞記事「死因、9割が溺死…地震より津波の被害鮮明に」などで解説されているように、大半が津波の犠牲者だ。

 気象庁の報道発表資料「平成23年3月11日14時46分頃の三陸沖の地震について」によると、津波の最大波が岩手県大船渡に到達したのは15時15分。宮城県石巻市鮎川には15時20分、岩手県釜石、岩手県宮古には15時21分に到達した。地震発生から最大波の到達まで、29~35分の猶予があったわけだ。人間の歩く速度は、分速60~80メートルほど。地震が起きてから15分以内に移動を開始すれば、徒歩でも800~1600メートル程度は進めた。上で紹介したデーリー東北新聞記事に書かれているように、この範囲に避難場所があれば、生存の可能性は高かったのだと思う。
 一方、テレビなどで津波の様子を見てから避難を開始した人もいただろう。そして、その結果脱出が遅れたケースも多かったはず。2011年3月18日付けmsn産経ニュース記事「高速・凶暴な特殊津波『射流』で被害拡大、滝のような水の壁が…東大が分析」は、釜石の沿岸部に、高さ約15メートルの津波が秒速約7メートルで押し寄せたと伝えている。分速に直せば420メートル、時速なら25.2キロメートル。徒歩では絶対に逃れられないし、車でも、渋滞や曲がり道にはまればすぐに追いつかれてしまう速度だ。

 広瀬弘忠氏は名著『人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学』(集英社新書)で、災害時に生き延びる人の条件として「1.若さ 2.経済力 3.沈着で冷静な判断力 4.果断でタイムリーな意志決定と行動力 5.生存への意志」を挙げている。今回の震災では、とりわけ「果断でタイムリーな意志決定と行動力」が、生死を分けたと言えるだろう。地震発生からすぐに動けた人は生き残り、そうでない人は逃げ遅れた。
 ここで悔やまれるのが、2010年2月に起こった「チリ大地震」だ。2010年4月14日付け当ブログ記事「津波未経験者の早期避難率は、経験者より4割低い」で触れたように、当時、気象庁は最大3メートルの津波警報を出した。ところが、実際に観測された津波は、最大で1.2メートル。この時の経験から、今回の津波でも「大したことはないだろう」と考えた人がいたに違いない。その結果、被害者の数が増えてしまったとしたら、悲しいことだ。

 当時書いたことの繰り返しになるが、人間の想像力は貧しい。だから、災害の恐ろしさを、あらゆる手段で、自分自身に分からせる必要があるのだ。それが、まさかの際の生死を分ける。自戒を込め、もう一度書き記しておきたい。

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コメント:2

BLITZ 2011年3月23日

自然の猛威の前には人間は無力であることを、まざまざと思い知らされた
津波の映像でした。

過去に被害を受けたこともあり、被災地の方たちは
津波に対する意識もあったろうし、
想像以上の威力と速度だったんだと思います。

時速25kmと言ったら、マラソンの
トップランナーよりも速いスピード。
とても逃げることはできません。

まさかの思いが逃げることを送らせたんでしょうかねぇ。

白谷 2011年3月23日

BLITZさん、こんにちは。

>過去に被害を受けたこともあり、被災地の方たちは
>津波に対する意識もあったろうし、
確かに、宮城や岩手の津波に対する意識は、
ほかの地域より高かったと思うんですよね。
それでも、こんなにたくさんの方が犠牲になってしまった。
もし、僕らの住んでいる地域に津波が押し寄せたら、
どのくらいの被害が出るのか、正直、想像もできません。
僕自身も、てきぱきと行動できるか……。
自信はないですね……。

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