ホーム > ニュースな数字 > 自販機で売られる清涼飲料は38.5%~廃止ならメーカーには大打撃

自販機で売られる清涼飲料は38.5%~廃止ならメーカーには大打撃

石原慎太郎4選会見「パチンコと自販機規制で電力対策」

 4選を果たした石原慎太郎東京都知事(78)が、自販機やパチンコの電力消費ぶりをぶった切り、ネット上で絶賛する声などが相次いでいる。一方、両業界では、節電に努めていると反論しており、困惑している様子だ。
(中略)
 10日夜の当選後も、各社のインタビューに熱弁を振るった。石原氏は、自販機とパチンコの両業界で年間の電力消費がそれぞれ450万キロワットで、合わせて1000万キロワット近い電力が浪費されていると強調。これは、福島第1原発とほぼ同じ電力消費だとした。そして、国は、オイルショック時に出したように、節電のための政令を出せばよいとまで言い切った。

(2011年4月11日 Jcastニュース)

 東京都知事選で、石原慎太郎氏が4回目の当選を果たした。当確が出た後のインタビューで飛び出したのが、上のセリフ。

 石原氏の「自販機とパチンコで、年間の電力消費が1000万kW」という発言は、「消費電力」と「消費電力量」を混同している。消費電力とは電化製品などを動かす際に使われる電力のこと。この値に時間を掛けたものが「消費電力量」になる。例えば、消費電力が10Wの電球を1時間点灯すると、消費電力量は10Whだ。「年間の電力消費」と言うからには消費電力量を指すはずだが、単位はkWとなっている。
 石原氏は自販機とパチンコの消費電力量について、「福島第1原発とほぼ同じ」という表現をしている。東京電力サイトの「最近の運転実績」ページによれば、2009年度における福島第1原発の年間発電量は329億万kWh。「1000万kW」とは、似ても似つかない値だ。ただし、1000万kWと聞いてピンと来る数字がある。福島第1原発(出力470万kW)と、福島第2原発(出力440万kW)の合計出力が、910万kWなのである。恐らく石原氏は、「自販機とパチンコの消費電力は、福島第1・第2原発の合計出力とほぼ等しい」という意味合いのことを言いたかったのではないか。

 ただし、こうやって善意に解釈しても、不都合な点が出てくる。
 自動販売機工業界の「2009年末自販機普及台数及び年間自販金額」ページによれば、自販機の普及台数は396万1600台。これに対し、自販機の消費電力は450万kWだと、石原氏は主張している。
 450万kW÷396万1600万台=1.14kW(1140W)。つまり、石原氏の主張が正しければ、自販機の1台あたり消費電力は1140Wになる。これは、500リットルクラスの大型家庭用冷蔵庫(定格消費電力250~300W程度)の4倍ほどだ。396万1600台の自販機の中には、乾電池・玩具(70万台)やたばこ(40万5000台)など消費電力の小さい自販機も含まれている。いくら何でも、1台の自販機が冷蔵庫の何倍も電気を食うことはないはずだ。
 同じJcastニュース記事には、日本自動販売機工業会専務理事の「全国の消費電力量は年間44億キロワット時」というコメントも紹介されている。44億kW÷365日÷24時間=50万2283kW。これを396万1600台で割ると、0.127kWh=127Wh。恐らく、こちらの方が実態に近い。石原氏の言う「450万kW」という数字は誤りで、全国の自販機をすべて廃止しても、せいぜい数十万kWほどの節電にしかならないだろう。

 これに対し、自販機を全面廃止した場合の経済的損失は大きい。富士経済のリポート「清涼飲料市場 2009年の結果と2010年の展望」によると、2009年の清涼飲料市場は4兆8820億円。一方、前出の「2009年末自販機普及台数及び年間自販金額」によれば、自販機による清涼飲料の年間販売金額は1兆8795億円。清涼飲料の38.5%が、自販機を通じて売れているわけだ。自販機廃止で、コンビニなど他のチャネルに回る消費者もいるだろうが、清涼飲料の売り上げ激減は避けられまい。
 自販機チャネルへの依存度が高いメーカーは、さらに厳しい状況に追い込まれる。下の表は、ダイドードリンコの「平成23年1月期 決算説明補足資料」、アサヒビールの「FACTBOOK2011」、キリンホールディングスの「2009年度版データブック」、伊藤園の「Corporate Book 2010」から、自販機チャネルが各社の販売額に占める割合を抜き出したもの(キリンHD、アサヒビールは非アルコール事業のデータ)。

  自販機の割合
ダイドードリンコ 88.8%
アサヒビール 34.0%
キリンHD 31.2%
伊藤園 16.8%

 伊藤園のように自販機への依存率が低いメーカーなら、仮に自販機が廃止されてもやっていけるだろう。しかし、ダイドードリンコのような企業にとっては、まさに死活問題。石原氏は、そのあたりの事情を分かっているのだろうか?
 石原氏の発言をチェックしてみると、ずいぶん粗雑な点が多いなあと思う。勇ましいけど、整合性はとれていない。この人が、あと4年間、都政を担うのか……。まあ、僕が住んでいるのは森田健作氏を県知事に、プリティ長嶋氏を県議に選んだ選挙区だから、ため息をつく資格もないんだけどさ。

—-
※2つのブログランキングに参加中です。下のバナーをクリックしていただけると嬉しいです。

人気ブログランキングへ にほんブログ村 ニュースブログへ

—-

関連する記事:


コメント:2

BLITZ 2011年4月12日

石原さんの発想は、短絡的で偏っています。
発言に影響力のある人だから、何もかも自粛や規制ではなく、
その産業に携わっている人もいるのだから、
配慮ある発言を望みます。

ただ、日本ほど自販機の多い国はないだろうし、
パチンコも日本独自のレジャー(?)なんでしょうね。
検討は必要かもしれません。

白谷 2011年4月12日

BLITZさん、こんにちは。
仰るとおり、石原さんには配慮ある発言を求めたいですね。
自販機のない世の中を目指すのは、方向性としてはアリだと思います。
でも、いきなり取りかかれば、潰れる企業が出ちゃいますよね。
大きな影響力を持つ都知事としては、あまりにうかつだと思うなあ。
自販機の一時停止や省エネ機種への転換
(現状でもかなり進んでいるみたいですが)を
求めるところから始めればいいんですけどねえ。

コメントフォーム
入力した情報を記憶する

トラックバック:0

この記事のトラックバック URL
http://www.shiratani.net/2011/04/11/%e8%87%aa%e8%b2%a9%e6%a9%9f%e3%81%a7%e5%a3%b2%e3%82%89%e3%82%8c%e3%82%8b%e6%b8%85%e6%b6%bc%e9%a3%b2%e6%96%99%e3%81%af38-5%ef%bc%85%ef%bd%9e%e5%bb%83%e6%ad%a2%e3%81%aa%e3%82%89%e3%83%a1%e3%83%bc/trackback/
トラックバックの送信元リスト
自販機で売られる清涼飲料は38.5%~廃止ならメーカーには大打撃 - 白谷のノート(3冊目) より

ホーム > ニュースな数字 > 自販機で売られる清涼飲料は38.5%~廃止ならメーカーには大打撃

注意書き
 このサイトはリンクフリーです。個別記事への直リンクも問題ありません。引用については、ルールの範囲内でどうぞ。
 記事に誤りなどがあれば、コメント欄、または書き手についてページ内のメールフォームを使ってお教えいただけると、大変ありがたいです。
 初めてコメントをご投稿いただく場合、管理人の承認が行われるまで表示されないことがあります。時に、承認まで数日かかることもありますので、あらかじめご了承ください。
書き手について、他
検索
過去に書いたこと
ブックマークとRSS

全ての記事(RSS2.0)
全ての記事(Atom)
全てのコメント(RSS2.0)


過去につぶやいたこと
つぶやいたこと

ページの上部に戻る