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『KAGEROU』の著者は6000万円、出版社は1億2000万円を既に確保

水嶋ヒロさん小説大賞受賞作に責任販売制 注文40万部超も売れ残り懸念

 俳優、水嶋ヒロさん(26)=筆名(本名)・齋藤智裕=が書いた第5回ポプラ社小説大賞受賞作『KAGEROU』(15日発売、1470円)の売れ行きに注目が集まっている。文芸書では10万部売れれば大ヒットといわれる中、ポプラ社には全国の書店から40万部を超える事前注文が殺到した。出版不況に苦しむ書店は年末商戦の目玉にと、もくろむが、過剰発注で大量の売れ残りを抱えることを懸念する声も出ている。

(2010年12月15日 msn産経ニュース)

 今回のポプラ社のやり方は、ちょっとあからさますぎる。「売り逃げ」と呼ばれても仕方ないというのが、僕の率直な感想だ。

 上のmsn産経ニュースによれば、『KAGEROU』の注文部数は40万部以上。1部1470円だから、総売上額は1470円×40万部=5億8800万円となる。2010年7月20日付けの当ブログ記事『電子書籍の普及は、埋もれていた書物の発掘をもたらす!』でも触れたが、このうち1割が著者、2割が出版社の取り分というのが、おおよその目安だ。この本は責任販売制なので、現時点で水嶋ヒロさんは6000万円、ポプラ社は1億2000万円程度を確保したと考えられるだろう。

 小説が面白くて、今後も重版がかかれば素晴らしい。著者も出版社も書店も読者も、全員が幸せになれる。しかし、どうやらそんな状況ではないようだ。Amazonのレビューを眺める限り、大半は酷評。僕自身は未読なので断定はできないが、この調子では売り上げを伸ばすのは難しそうだ。むしろ、初版40万部をさばき切れるかどうかの心配をすべきかもしれない。
 一番苦しい立場に置かれているのが書店だ。この本は責任販売制なので、通常より有利な条件で仕入れられた可能性はある。それでも、売値の7~8割を支払うことになっているはずだ。1冊売れ残れば、1100円程度の損失。中小規模の書店にとっては、軽くない負担だ。もし、売れ残りが大量に出れば、ポプラ社の信頼は地に落ちる。次からは、同社に対する仕入れを絞る書店が増えるだろう。

 しかし、ポプラ社は大変だなあ。一時的に売り上げは立つだろうが、書店や取り次ぎの信頼は失う危険性が高い。明らかに、今後の商売はやりにくくなるはずだ。
 まるで、タコが己の足を食べるようなもの。逆に言えば、それだけこの出版社は追い込まれているのだろう。だが、こうした近視眼的なやり方は、他の業界関係者や読者までも、まとめて不幸にしてしまうと思うんだよなあ……。

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電子書籍の売り上げ予測は1作品5000部~ただし、著者の取り分は格段に大きい

村上龍さん、目標は「年商1億円」 電子書籍の新会社で

 新たな電子書籍制作・販売会社「G2010」を設立する作家の村上龍さんらが4日、会見した。年間20点の作品を出し、1億円の売り上げを目指す。同席したよしもとばななさんはエッセーを、ビデオメッセージを寄せた瀬戸内寂聴さんは未発表作をリリースする予定だ。

(2010年11月5日 朝日新聞)

 上の朝日新聞記事によれば、村上龍が設立した電子書籍会社「G2010」は、年間20点を出版。1億円の売り上げを目指すという。
 ITmedia記事「『変化を自分で作りたい』 村上龍氏が出版社と組まずに電子書籍を出す理由」などを参照すると、「20点」の中には村上氏の『歌うクジラ』やよしもとばなな氏の書き下ろしエッセイ集、瀬戸内寂聴氏の新刊小説などが含まれるようだ。なかなか豪華なラインナップと言えるだろう。
 だが、売り上げ予測は控えめだ。「20点で1億円」ということは、1作品あたりの売り上げは500万円。iPhone・iPad向けの『歌うクジラ』は、坂本龍一氏の楽曲なども含めて1500円という値付けなので、1作品の平均単価は1000円程度になるだろうか。すると、1作品あたり販売数は5000部程度という計算になる。

 著者の知名度を考えると、平均5000部という販売数は寂しいようにも思える。ただし、著者の収入は、紙の書籍とは段違いに大きいのだ。紙の書籍の場合、著者印税は7~10%程度。1000円の本が5000部売れた場合、収入は1000円×5000部×10%=50万円となる。一方、「G2010」では「電子化コスト回収後、配信事業者に支払う手数料分を除いた売り上げ額70~90%を作家に配分する」(ITmedia記事より)らしい。「電子化コスト回収」のために何部売れればいいのか分からないが、仮にトータルの印税率を40%程度を見積もってみると、1000円の電子書籍が5000部売れれば、著者の取り分は1000円×5000部×40%=200万円となる。

 今なら、他の作家・出版社などに先駆けて、電子書籍制作のノウハウを積めるというメリットがある。また、競争相手が少ない分、話題になる可能性も高い。電子書籍リーダーを持っている人には、新しもの好きが多いものだ。「取りあえず、1冊買ってみるか」という需要は、今なら必ずあるだろう。

 年商1億円とは、一見、小さな目標のようだ。しかし、著者側にも電子書籍会社側にも、勝算は十分にあるようにみえる。 

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2006~9年の年間アルバムランキングで、「ベスト盤」の占める割合は51.5%

宇多田さん、来月発売ベスト盤を「私と無関係」

 11月24日に二つのレコード会社から発売される歌手の宇多田ヒカルさん(27)の2種類のベスト盤のうち1枚について、宇多田さん本人が「私の意志とは無関係のリリース。ファンにお金を出させるのは心苦しい」と自身のブログで批判していることが、26日分かった。

(2010年10月26日 読売新聞)

 レコード会社がベスト盤を出したがる理由は単純だ。売れるからである。

 下表は、オリコンスタイルが発表している年間アルバムランキングから、2006年以降のベスト10をまとめたもの。それぞれ、「2006年 年間アルバムランキング」、「2007年 年間アルバムランキング」、「2008年 年間アルバムランキング」、「2009年 年間アルバムランキング」を参照している。地色が青くなっているのが、いわゆる「ベスト盤」だ。

2006年 年間アルバムランキング
1位 Ken Hirai 10th Anniversary Complete Single Collection

’95-’05 “歌バカ”(平井堅)

207万0766枚
2位 BEST~second session~(倖田來未) 176万8628枚
3位 ALL SINGLES BEST(コブクロ) 174万8682枚
4位 Catch The Wave(Def Tech) 122万5757枚
5位 B’z The Best “Pleasure II”(B’z) 119万1725枚
6位 BEST(中島美嘉) 110万9420枚
7位 ULTRA BLUE(宇多田ヒカル) 88万2343枚
8位 (miss)understood(浜崎あゆみ) 87万7433枚
9位 NAMELESS WORLD(コブクロ) 86万6948枚
10位 LOVE COOK(大塚愛) 83万1633枚
ランキングベスト10の売上合計 1257万3335枚
ベスト盤の売上 788万9221枚
ベスト盤の占める割合 62.7%
 
2007年 年間アルバムランキング
1位 HOME(Mr.Children) 118万1241枚
2位 BEST~second session~(倖田來未) 102万2448枚
3位 ALL SINGLES BEST(コブクロ) 85万2637枚
4位 ベスト・ダム・シング(アヴリル・ラヴィーン) 84万8912枚
5位 A BEST 2-WHITE-(浜崎あゆみ) 71万6582枚
6位 愛 am BEST(大塚愛) 71万3563枚
7位 A BEST 2-BLACK-(浜崎あゆみ) 69万6728枚
8位 ケツノポリス5(ケツメイシ) 68万0002枚
9位 CAN’T BUY MY LOVE(YUI) 64万5412枚
10位 グレイテスト・ヒッツ(スキマスイッチ) 64万4231枚
ランキングベスト10の売上合計 800万1756枚
ベスト盤の売上 362万3741枚
ベスト盤の占める割合 45.3%
 
2008年 年間アルバムランキング
1位 EXILE LOVE(EXILE) 147万0959枚
2位 BEST FICTION(安室奈美恵) 144万7149枚
3位 5296(コブクロ) 140万4658枚
4位 EXILE CATCHY BEST(EXILE) 122万2339枚
5位 HEART STATION(宇多田ヒカル) 99万7536枚
6位 EXILE BALLAD BEST(EXILE) 94万3901枚
7位 B’z The Best“ULTRA Pleasure”(B’z) 94万0333枚
8位 A COMPLETE ~ALL SINGLES~(浜崎あゆみ) 81万5643枚
9位 AND I LOVE YOU(DREAMS COME TRUE) 78万5641枚
10位 あっ、ども。おひさしぶりです。(GReeeeN) 77万8578枚
ランキングベスト10の売上合計 1080万6737枚
ベスト盤の売上 536万9365枚
ベスト盤の占める割合 49.7%
 
2009年 年間アルバムランキング
1位 All the BEST! 1999-2009(嵐) 143万2781枚
2位 SUPERMARKET FANTASY(Mr.Children) 125万1148枚
3位 塩、コショウ(GReeeeN) 100万0127枚
4位 愛すべき未来へ(EXILE) 89万7095枚
5位 EXILE BALLAD BEST(EXILE) 84万7273枚
6位 ayaka’s History 2006-2009(絢香) 78万6657枚
7位 DO YOU DREAMS COME TRUE?

(DREAMS COME TRUE)

66万8097枚
8位 レミオベスト(レミオロメン) 48万9464枚
9位 Box Emotions(Superfly) 48万0865枚
10位 CALLING(コブクロ) 46万7521枚
ランキングベスト10の売上合計 832万1028枚
ベスト盤の売上 355万6175枚
ベスト盤の占める割合 42.7%

 ご覧の通り、2006、2007、2008年のランキングでは5つのベスト盤が、2009年には4つがベスト10入りを果たしている。2006年には、1~3位をベスト盤が独占した。
 2006~2009年にベスト10入りした40作品の総売上は、3970万2856枚。一方、ベスト盤19作品の総売上は2043万8502枚だった。ベスト盤の占める割合は51.5%に達する。ベスト盤は、CD市場において巨大な存在感を発揮しているのだ。
 しかもベスト盤の制作は、オリジナルアルバムに比べて手間も費用もかからない。安く作れて、しかも売れる。だから、多少強引な手段に出ても、レコード会社はベスト盤を出すのだろう。

 レコード会社側にも、言い分はあるようだ。音楽作りの現場は、雑誌やテレビ番組、映画作りなどと似通っていて、共同作業の局面が多い。確かに、曲を作り、歌詞を書き、歌うのはアーティスト。しかし、音楽というパッケージを作る際には、スタジオミュージシャンやエンジニアなどの創意工夫もふんだんに生かされているようだ。彼らの権利を代表する形で、レコード会社が「原盤権」を持つ。それは、一定の理屈があるとは思う。
 しかし、作品を生みだしたのは、やはりアーティストなのだ。だから、アーティストが望まない作品が世に送り出されるのは、あまりに不幸なことだろう。

 もし、アーティストに労働組合のようなものがあれば、レコード会社に対して「原盤権に関する慣例の廃止」を訴えて活動するんだろうけどなあ。宇多田ヒカルが、吉田美和や草野マサムネあたりに声を掛け、動いてくれないかしら?

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