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距離

小規模小学校の運動場は境界まで20mあまりしかないことも

サッカーボール避け転倒死亡 蹴った少年の親に賠償命令

 校庭から蹴り出されたサッカーボールを避けようとして転倒した男性(死亡当時87)のバイク事故をめぐり、ボールを蹴った当時小学5年の少年(19)に過失責任があるかが問われた訴訟の判決が大阪地裁であった。田中敦裁判長は「ボールが道路に出て事故が起こる危険性を予想できた」として過失を認定。少年の両親に対し、男性の遺族ら5人へ計約1500万円を支払うよう命じた。

 判決によると、少年は2004年2月、愛媛県内の公立小学校の校庭でサッカーゴールに向けてフリーキックの練習中、蹴ったボールが門扉を越えて道路へ転がり出た。バイクの男性がボールを避けようとして転び、足を骨折。その後に認知症の症状が出るようになり、翌年7月に食べ物が誤って気管に入ることなどで起きる誤嚥(ごえん)性肺炎で死亡した。

(2011年6月28日 朝日新聞)

 上で紹介した朝日新聞記事には、日本スポーツ法学会理事・桂充弘弁護士の「やや酷な印象」というコメントが掲載されている。僕の感想も、全く同じだ。

 文部科学省の「小学校設置基準」によれば、小学校の運動場は、児童数に応じて最低限の面積が定められている。児童数が1~240人の場合は2400平方メートル、241~720人の場合は「2400+10×(児童数-240)」平方メートル、721人以上の場合は7200平方メートル以上の運動場が必要だ。
 一方、愛媛県サイトの「統計BOX~学校基本調査」ページによると、2010年度における県内の小学校数は349校。児童数は7万9953人だった。1校あたりの児童数は、7万9953人÷349校≒229人となる。つまり、朝日新聞記事で取り上げられた愛媛県の小学校は、前述の「児童数1~240人」に当てはまる可能性が小さくないといえるだろう。

 仮に、その運動場の面積が2400平方メートルちょうどだったとしよう。これは、40メートル×60メートルの長方形や、半径28メートルの円の広さに当たる。運動場のど真ん中にいても、学校外との境界まで、20~40メートルほどしかないわけだ。サッカーのゴールは運動場の端に設置されるケースが多いはずで、境界までの距離はもっと短くなる。
 これに対し、熊本大学の谷口太一氏、肥合康弘氏、大石康晴氏が「青少年期のサッカー選手におけるキック脚速度とポールの飛距離の関連」で行った実験結果によれば、小学校5・6年生サッカー部員16人の平均キック距離は24メートルだったという。子供が思いきってボールを蹴れば、学校外に飛び出すことは十分に考え得るのだ。
 上の記事を読む限り、この状況で少年の両親に1500万円の賠償命令が出たのは、かなり厳しい判決ではないか。

 飛び出してきたサッカーボールが原因で怪我をした立場になれば、損害賠償を求める気持ちもよく分かる。ただ、親の側からみればつらいなあ……。全国のサッカー少年の親が萎縮しかねない判決だと思うのだ。

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地震発生後15分間の行動が、津波被災者の生死を分けた

大津波まで30~40分 揺れ直後に避難決断

 東日本大震災の大津波により岩手県北で最大の被害を受けた野田村では、多数の死者、行方不明者が発生し、21日現在も懸命の捜索が続いている。一方で無事だった住民は揺れの後に数百メートル歩いて村の指定する避難場所や高台などに避難した人が多い。時間があったのに逃げなかった人もおり、津波への警戒心が明暗を分けたとみられる。

(2011年3月22日 デーリー東北新聞)

 3月11日15時25分、僕はツイッターにこんなツイートを投稿した。

「津波は見物するようなものじゃない!とにかく、高いところへ!」

 このときの気持ちは、今も忘れられない。テレビには、海に近い高架道路の上で津波の様子を眺めている人々の姿が映されていた。ふくれあがる海に巻き込まれていく人や車を見て、僕はただ、キーボードを打つことしかできなかった。鉛を飲むような気分とは、こういうことを言うのだろう。

 警察庁の広報資料「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震の被害状況と警察措置」によれば、震災による死亡・行方不明者は、3月22日18時現在で2万2641人。2011年3月19日付け読売新聞記事「死因、9割が溺死…地震より津波の被害鮮明に」などで解説されているように、大半が津波の犠牲者だ。

 気象庁の報道発表資料「平成23年3月11日14時46分頃の三陸沖の地震について」によると、津波の最大波が岩手県大船渡に到達したのは15時15分。宮城県石巻市鮎川には15時20分、岩手県釜石、岩手県宮古には15時21分に到達した。地震発生から最大波の到達まで、29~35分の猶予があったわけだ。人間の歩く速度は、分速60~80メートルほど。地震が起きてから15分以内に移動を開始すれば、徒歩でも800~1600メートル程度は進めた。上で紹介したデーリー東北新聞記事に書かれているように、この範囲に避難場所があれば、生存の可能性は高かったのだと思う。
 一方、テレビなどで津波の様子を見てから避難を開始した人もいただろう。そして、その結果脱出が遅れたケースも多かったはず。2011年3月18日付けmsn産経ニュース記事「高速・凶暴な特殊津波『射流』で被害拡大、滝のような水の壁が…東大が分析」は、釜石の沿岸部に、高さ約15メートルの津波が秒速約7メートルで押し寄せたと伝えている。分速に直せば420メートル、時速なら25.2キロメートル。徒歩では絶対に逃れられないし、車でも、渋滞や曲がり道にはまればすぐに追いつかれてしまう速度だ。

 広瀬弘忠氏は名著『人はなぜ逃げおくれるのか―災害の心理学』(集英社新書)で、災害時に生き延びる人の条件として「1.若さ 2.経済力 3.沈着で冷静な判断力 4.果断でタイムリーな意志決定と行動力 5.生存への意志」を挙げている。今回の震災では、とりわけ「果断でタイムリーな意志決定と行動力」が、生死を分けたと言えるだろう。地震発生からすぐに動けた人は生き残り、そうでない人は逃げ遅れた。
 ここで悔やまれるのが、2010年2月に起こった「チリ大地震」だ。2010年4月14日付け当ブログ記事「津波未経験者の早期避難率は、経験者より4割低い」で触れたように、当時、気象庁は最大3メートルの津波警報を出した。ところが、実際に観測された津波は、最大で1.2メートル。この時の経験から、今回の津波でも「大したことはないだろう」と考えた人がいたに違いない。その結果、被害者の数が増えてしまったとしたら、悲しいことだ。

 当時書いたことの繰り返しになるが、人間の想像力は貧しい。だから、災害の恐ろしさを、あらゆる手段で、自分自身に分からせる必要があるのだ。それが、まさかの際の生死を分ける。自戒を込め、もう一度書き記しておきたい。

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福島原発から60km地点の放射線量はCTスキャン1.4回分に過ぎない

米「日本の避難範囲も正当」 4号機水なし発言は修正

米エネルギー省のポネマン副長官は17日、ホワイトハウスでの記者会見で、福島第一原発の事故による住民の避難範囲が日米で食い違っていることについて「(日本側による)措置はとりあえず正当、というのが私たち全員の見解だ」と述べ、問題ではないとの認識を示した。

 避難範囲については、日本が「第一原発から半径20キロ圏内の住民に避難を、20~30キロ圏内では屋内退避」としているが、米国が自国民に対し「80キロ圏内は避難」としており、韓国なども同様の措置を取っている。

(2011年3月18日 朝日新聞)

 上で紹介した朝日新聞記事でも解説されている通り、福島第一原発の事故において、日本政府は「半径20キロメートル範囲は避難・30キロメートル範囲は屋内退避」と定めている。一方、アメリカ・イギリス・韓国政府などは、避難範囲を半径80キロメートルとしているようだ。
 こうした違いが生まれるのは、当然のことだ。外国政府は、事故現場にスタッフを派遣してるわけでもないし、事故に関するデータを集める手段もない。彼らは、現場を正確に把握するだけの一次情報を持ち合わせていないのだ。だから、最悪の事態に備え、リスクを過大に見積もるのは自然な態度だろう。
 一方、日本政府が得ている情報は、相対的に豊富だ。事故現場の状況を最も正確につかんでいるのは、日本政府であり、東京電力なのである。彼らは最悪の事態ではなく、現状分析に基づいて避難範囲を決めている。それが、「20~30キロメートル」と「80キロメートル」の差を生み出しているのだ。

 だから、「外国人は80キロメートル内でも避難してる!」とパニックになるのは間違いだ。文部科学省の「都道府県別環境放射能水準調査結果」ページを見ると、福島第一原発から130キロメートルほど離れた茨城県水戸市の放射線量は、1時間あたり0.2マイクロシーベルト程度。24時間・365日間外に出ていたとしても、1年間に受ける放射線量は1800マイクロシーベルト程度にしかならない。これは、世界における1人あたりの自然放射線量(1年間に2400マイクロシーベルト)より少ないのだ。また、宮城県の「福島第一原子力発電所事故にかかる情報及び相談窓口」ページによれば、福島第一原発から60キロメートルほどの宮城県山元町で、16~17日にかけて1時間あたり1.2~1.6マイクロシーベルトを計測。1年間に換算すると約1万マイクロシーベルトで、これはCTスキャン(約6900マイクロシーベルト)の1.4回分に相当する。やはり、日常生活には影響のないレベルだ。
 現在のところ、僕には「半径30キロメートル圏内」の放射線量がどうなっているのか分からない。しかし、現状のまま事態が推移すれば、少なくとも「30キロメートル圏外」は問題のない放射線量に抑えられるだろう。また、事故が上手に処理できれば、「30キロメートル圏内」でも、放射線量の値は劇的に下がるだろうと推測できる。

 繰り返しになるが、今回の事故状況を最も正確に把握しているのは、日本政府と東京電力だ。たちの悪い陰謀論を信じるのは自由だが、そうして目が曇ると、判断力は確実に低下する。まずは、政府や東電の出す情報を、先入観なく見つめること。それが、己や家族、友人を守るために一番大切なのだ。

※3月18日22時30分追記
3/18の17時時点で、「CTスキャン1回分」の放射線量を「5万マイクロシーベルト」と誤って記載していました。正しくは、上記の通り「6900マイクロシーベルト」です。訂正させていただきます。

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